Initiativesくうねあの取り組み

2024.10.11

子どもがお泊まり保育の計画を立てるって本当!?くすの木ならではの取り組み

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保護者ライター執筆
この記事は、くうねあの園児・卒園生の保護者の方に取材・執筆を行なっていただきました。

広島市にあるくすの木保育園・認定こども園くすの木のお泊まり保育の特徴は、子どもが主体となってテーマやイベントを決めるところ。全国的にも珍しいスタイルだと、堀江宗巨大園長は話します。

今回は、くすの木がお泊まり保育を大切にする理由や、なぜ子ども主体で計画を立てるのか、大園長に話を伺いました。また、お泊まり保育を担当した先生方に、お泊まり保育の裏側を尋ねました。

くすの木がお泊まり保育を実施する理由

まずは大園長にお泊まり保育を実施する理由と、歴史について話を伺いました。まずお泊まり保育は、保育のカリキュラムでは必須ではなく、実施する園とそうでない園があるようです。

くすの木は「子どもたちの成功体験につながり、自信を持てるようになること」を大きな目的として、お泊まり保育を実施しているのだとか。家族と離れて泊まる経験ははじめてだという子どもが多く、お泊まり保育に対して不安な気持ちを抱える場合も少なくありません。

お泊まり保育

しかし、実際にお泊まり保育を経験し「泊まれた!」「楽しかった!」と感じることで、子どもたちは大きな自信を持てるようになるようです。毎年お泊まり保育の様子を見ている大園長は「どの年の子どもたちも“ひと皮むけたなぁ”と感じる瞬間が見られますね」と語ります。

お泊まりしない年もある!?子ども主導で計画を立てるスタイル

くすの木のお泊まり保育は、必ずお泊まりしないといけないわけではありません。その理由は、子どもの意見を尊重して計画を立てているからです。

2023年度のくすの木祇園分園はお泊まりせず、夜に星を見に行って解散したそうです。その年、その園によって子どもたちの意見が異なるので、実施内容もさまざま。当初から子ども主導で計画を立てていたのか、大園長に尋ねたところ、このような話を聞けました。

大園長

実は当初、絶対に子ども主導で行いたいと思っていたわけではありません。お泊まり保育の練習と称して、本番の1週間前に園に泊まったことがあるのですが(笑)その際は、大人が主導で行いましたね。

ただ、本番で三滝少年自然の家に泊まった際は、子どもと大人が話し合いをして、当日のやりたいことを決めました。その場のノリと勢いで決めつつ、みんなが協力してイベントをこなすことで、全員が楽しめた上に「できたじゃん!」と自信を持てるようになりました。

このことがきっかけになったのと、保育全体の理念を「子どもが主体」としたので、今は子どもが主導でお泊まり保育の話し合いを進めるスタイルになっています。

子ども主導で本当に大丈夫?

2024年のにじさん(年長児の呼称)の保護者でもあった筆者は、当初子ども主導でお泊まり保育の計画を進めても大丈夫なのか、心配になったこともあります。そこで大園長に子ども主導で計画を立てる上での、安全性について話を伺いました。

大園長

くすの木は20人以下の小集団でお泊まり保育をする上、1ヵ月以上前から話し合いをはじめるので、子ども主導であっても安全性は確保できると考えます。さすがに年長児が100人規模の大きな園では、子ども主導で決めていくのは安全管理上難しいとは思いますが……。少人数だからこそ、子どもたちが買い出しも行けますし、食事作りだってできます。

お泊まり保育

もちろん大人がしっかりサポートするので、子どもの意見を尊重しながらも安全性が確保できているんですよ。

保育士の視点から見たくすの木のお泊まり保育について

ここからは2024年度、くすの木祇園分園(お山)のお泊まり保育を担当した、大田亜矢さんと藤本奈津美さんに話を伺います。1ヵ月以上にわたる長期の話し合いをどのようにサポートしていたのか、裏側を探ってみました。

ー子ども主体の話し合いはまとまらないと思うのですが、円滑に進むよう、先生たちはどんな点に配慮しているのでしょうか

大田さん

まずは話し合いに慣れることが大切だと考えます。そのためには小さなテーマからはじめ、一人ひとりが意見を出せるよう配慮しました。

お泊まり保育

例えば子どもたちに「お泊まり保育で何をする?」と大きなテーマを投げかけると意見を出しにくいのですが、「お泊まりってどんなイメージ?」と小さな答えやすいテーマからはじめることで、意見交換の練習になると考えます。

藤本さん

話し合いのときは以下のルールを決め、毎回話し合いの前に子どもたちに伝えていました。

「意見がある人は手を挙げる」
「人の話を最後まで聞く」
「反対意見であってもまずは“なるほど”などクッション言葉を入れる」

最初は意見が出るたびに「え~」という声も多かったのですが、毎回最初にルールをおさらいすることでネガティブな声も少なくなり、ポジティブな意見が飛び交うようになったのがうれしかったですね。

大田さん

いろいろと配慮しますが、やはり集団の場では意見を言いにくい子どももいます。話し合いの場で「○○ちゃんはどう?」と聞いても発表しづらいので、集まり以外の場でも意見を聞くよう工夫しました。

子どもたちから出た意見は最終的に大人がまとめ、伝えるようにしましたね。

ー子どもがイベント内容を決める上で、先生たちはどうサポートしているのでしょうか

大田さん

子どもからの意見は大切にしますが、やはりすべて子どもの意見を取り入れるのは難しいですね。なので、まずは大人から大切にしたいテーマを提示しました。

「協力」「挑戦」「助け合い」

話し合いが進む中で「楽しいことがしたい!」という意見が出たので、「みんなが楽しい」も入れた4つのテーマを打ち立てました。

藤本さん

基本的にその年の活動内容に沿ってイベント内容を決めていきますね。今年は畑でじゃがいもと玉ねぎを栽培・収穫したので、これらの野菜を使って作れる料理を考えたところ「カレーがいいんじゃない?」「卵を乗せたらおいしそう!」などの声が上がり、薄焼き卵を乗せたオムライス風キーマカレーにすることにしました。

調理風景

大田さん

テーマに沿ってメインのイベントを決めるのですが、2024年度は「にじさんの世界を作る」にしました。そこに至る経緯は、子どもから「いつもはおもちゃを譲り合うから思いっきり遊べない」という声があったからです。

工作風景

日頃は難しい、パーツをふんだんに使った作品を制作しつつ、自分たちの想い描く世界を表現することになりました。4つのテーマに沿ったイベントを決めることができましたが、子どもの意見だけを取り入れると話し合いがまとまらないので、大人の頭で咀嚼し、落としどころを決めるようにしましたね。

ー堀江大園長がお泊まり保育の中で「ひと皮むける瞬間がある」と話していましたが、大田さん・藤本さんも子どもが変わったと感じますか?

藤本さん

子ども同士で話し合いを重ねることで、にじさん同士の絆が深まったと思います。「やだな……」といったネガティブな声が減り、相手の気持ちに寄り添った言動が見られる場面が増えてきたように感じます。

これまでだと大人が介入しなければならない場面でも、子ども同士で折り合いがつけられるようになってきましたね。

大田さん

実はお泊まり保育では時間が足りず「にじさんの世界」が完成しなかったのですが、その後も時間を見つけて制作を進めていました。最後までやり遂げたことで、子どもの自信につながったと思います。

お泊まり保育

また、完成したものをそら・ほしさん(年少・年中児の呼称)にお披露目したのですが、「やっぱりにじさんってすごいね!」「カッコいい!」と褒められ、さらに自信を持てるようになったのではないでしょうか。

藤本さん

クラス全体(※)の成長につながったかなと思います。お泊まり保育をにじさんの中で完結させるのではなく、クラス全体で共有することで「にじさんみたいになりたいな」となり、そら・ほしさんにも良い影響を与えたように感じました。

「にじさんを応援したい!」と考えたそら・ほしさんがバッジや応援旗を制作し、みんなでお泊り保育を盛り上げる様子も見られましたね。

※くすの木では異年齢保育を取り入れているため、幼児クラスには年少・年中・年長児が集まっている

まとめ

子ども主導でお泊まり保育の計画を立て、実行することで、子どもたちは大きく成長することが分かりました。実際にお泊まり保育を経験した子どもの保護者から「1人で祖父母の家に泊まりに行けるようになった」「お手伝いを積極的にしてくれるようになった」など、成長した様子を聞く機会が増えたようです。現在在園中の保護者の方も、くすの木の利用を検討されている保護者の方も、お泊まり保育を通じて成長する子どもたちの姿を楽しみにしてほしいと思います。

ライタープロフィール

端場さん[PTA 会員No.001]※
2016年生まれの息子と、2018年生まれの娘を持つ、県北育ちの2児の母。子どもは2人ともくすの木出身。くすの木の好きなところは「のびのびとした園風」「園児の主体性を重んじるところ」「親の昼ごはんよりも美味しい、こだわりの給食」。現在ライターとして、さまざまな媒体で記事を執筆。内々に秘めておくだけではもったいない、くすの木の魅力を余すことなく伝えるために、くうねあWebマガジンの運営に参加。「この保育園に通わせたい」「こんな園で働いてみたい」と思っていただける方を1人でも多く増やすのが目標。

※PTAとはParents Team Authors(執筆・保護者チーム)の略で、執筆を引き受けてくれた保護者の方たちのチーム名です。
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