Initiativesくうねあの取り組み

2024.10.11

経験ゼロで保育の現場へ
元保護者の保育士が語る「恩送り」への想い

株式会社くうねあは広島市内を中心に、「認定こども園くすの木(以下、くすの木)」など現在5園の保育所を運営し、250人以上の子どもたちの笑顔を見守っています。保育士は、子どもたち一人ひとりと向き合い、共に成長できるよう、日々丁寧な保育を行っています。今回はくすの木の保育士の中から、元々卒園児の保護者であり、「保育士になりたい」という強い思いから実際に保育の仕事に就いた古賀さんにお話を伺いました。大きなキャリアチェンジを決断した理由と想いとは?

ー古賀さんは2人のお子さんを「くすの木」に預けられたそうですが、保護者目線で見る園の印象はどのようなものでしたか。

古賀さん

「くすの木」って、先生たちが子どもを子ども扱いしないんです。大人が「こう」と決めつけるのではなく、子どもたち一人ひとりの意見を尊重して、その日の様子ややりたいことに合わせて柔軟に活動を変えてくれたり、子どもに大きい声を出して言って聞かせるのではなく、あくまで対等な目線で話をしてくれていたり。そんな園での様子を見ていると、先生たちと子どもはまるで家族のような関係性で、親の私も毎日安心して子どもを送り出していましたね。

また先生たちは子どもに対してだけでなく、親に対してのコミュニケーションもすごく密でした。送り迎えの際には子どもの様子だけでなく、仕事のことや家庭のことなど、何でも相談できる信頼関係ができていて、すごく心強かったです。子育てをしていると、孤独を感じることがありますよね。くすの木の先生たちは、私たち親とも同じ目線で子どもに関わってくださり、貴重なパートナーのような存在でした。

ーくすの木で「一緒に子育てした」経験は、その後の古賀さんのキャリアにも大きな影響を与えたようですね。

働きながら子育てしていると、お迎えに行った後は、夜ご飯を食べさせてお風呂に入れて寝かすだけで精一杯。子どもと過ごす時間は、たった数時間しかないんですよね。そう思うと、1日の大半を子どもと過ごしてくださっている先生たちは、まるで「第2のお母さん」。特に体も心も大きく成長する子どもの大事なときに、丁寧に見守ってくれ支えてくれたくすの木の先生たちは、わが家にとって家族の一部のような存在に感じていました。

そうして「家で子ども1人見るのも大変なのに、どうして先生たちは複数の子どもたちをあれほど丁寧に見れるのか」と先生たちに尊敬を抱くうちに、保育士という仕事そのものにも興味を持つようになりました。

「自分も保育に関わって誰かの支えになりたい」「支えてもらった恩返しをしたい」と、気がついたら、子どもと親を支える保育の仕事に魅力を感じるようになっていたんです。

ーそれまでに保育のお仕事の経験はあったんですか?

長年アパレルメーカーで勤務していて、保育の経験はありませんでした。長男を保育所に預けていた頃は、デパートの紳士服売り場で販売職をしていて、仕事に育児にと忙しく動き回る日々。保育所のお迎えも、いつも最後から2番目。時間に追われる毎日を「一回リセットしたい」と思い、アパレルの仕事を離れた後に次男が生まれ、再びくすの木でお世話になることに。「保育の仕事に就きたい」と思うようになったのは、ちょうどその頃です。

大きなキャリア転換を決意しましたが、保育士になるには国家資格が必要ですし、簡単にはいきません。そんな時に(別の)保育園のキッチンの募集を見て、「キッチンでも」と思って応募しました。半年ほどで保育の補助の仕事に空きが出て、念願の保育の仕事へ。保育士試験をパスするのはまだ心理的にもハードルが高く、まずは保育のサポートができる「子育て支援員」の資格を取ってスタートしました。

ー初めての保育のお仕事は、順調でしたか?

楽しかった一方で、実際に保育の現場に入って働く中で、自然と「もっと理想の保育を追求したい」と思うようにもなりました。やはり保育現場は忙しいですし、私がくすの木で体験したような保育を「いざやろう」と思っても、理想と現実には差があるなと感じたのも事実です。

特に思い知ったのは、保育士の業務の幅広さ。書類づくり、データ作成、イベント準備など、いろんな仕事が並行して走るのが保育士の仕事の大変なところ。それに子どもの大切な命を預かっているので、当然大きな責任がついて回りますし、手は抜けません。

「子どもたちと保育士とがお互い良いリズムで1日を過ごして、夕方、保護者にお子さんをお返しする」
このシンプルなルーティーンが、多忙を極める保育の現場ではいかに難しいかを思い知りました。

そうして「保育士になってみないとできないこと、分からないことがある」と奮起。保育士資格を取得し、保育士として歩み始めて1年ほどが経った頃、くすの木の園長先生に声をかけていただいて、今はくすの木で保育士としてお世話になっています。

ーかつてお子さんが通った「くすの木」に、保育士として舞い戻ってきたんですね。

今年でくすの木で保育士として勤務して、2年目になります。

当時保護者として感銘を受けたくすの木の素晴らしい保育に、まだ自分の技術が全然追いついていかないだろうってのは見えていたので、声をかけていただいたときは嬉しい気持ちと、複雑な気持ちがありました。

常に子どもたちを中心に考えながら、膨大な業務を丁寧かつ迅速にこなすくすの木の先生方は、まだまだ私には遠い存在。私も、先生方のような保育士を目指して日々努力していますが、勉強の真っ最中ですね。

ー古賀さんはこれからどんな保育士人生を歩んでいきたいですか?

仕事をしながら子育てをする大変さを経験したからこそ、少しでも働くお父さんお母さんたちの役に立ちたいと思っています。例えば、働く親としてドキッとするのが、病気での呼び出し。保育園の立場としては、子どものためにもできるだけ早めのお迎えをお願いしたいところですが、私も同じように、子どもが急に体調を崩した時に、仕事と育児の両立に悩んだ経験があります。すぐに飛んでいきたいけど、そうはできない事情もわかる。だからこそ、保護者の皆さんの気持ちに寄り添い、共に子育ての悩みを乗り越えていきたいと考えています。

くすの木には、「恩送り」という温かい文化があり、お互いを思いやり、助け合う雰囲気が根付いています。例えば、急な休みが必要になった際に、「申し訳ありません」と伝えると、「気にしないで。みんな順番だから」と温かい言葉をかけてくれるんです。

くすの木で子どもを預かっていただいた頃、そして保育士として働く今も、くすの木の先生方からは多くのことを学び、たくさんのご恩をいただいています。今度は私が、その恩を保護者の方々へ「恩送り」して、誰かを支える立場として成長していきたいです。

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