Initiativesくうねあの取り組み

2024.07.09

意外に知らない園舎のお話し①
認定こども園くすの木 東原分園

こどもたちが毎日過ごす保育園。
その建物にはどんな印象がありますか?
中に入ったことがある人なら、小さくてかわいい机や椅子、低い洗面所などが印象に残っているかもしれません。

こどもたちが安全に安心して過ごせる建物であることはもちろんですが、
実際に毎日使う保育スタッフに聞いてみると、
コミュニケーションしやすい工夫や
こどもたちが面白がる仕掛けがあったり
逆に思いがけず困ったことがあったりと
なかなか興味深い話をお伺いすることができました。

最初に訪ねたのは
認定こども園くすの木 東原分園。

マンションビルの1階に東原分園が開園したのは2017年4月。
設計事務所と一緒に計画時から携わっていた園長の空本くみさんにお話しを伺いました。

東原分園に着くと、まず外観が保育園らしくないことに驚く。
「出来立ての頃は、こどもと大人が楽しそうに出入りして、いつもいい匂いがしてるから、道行く人に『ここでランチできるんですか?』ってよく聞かれて『ランチだけどこどもたちの給食です』って答えてました」と、くみ園長。
ウッドデッキがあって、Kusunokiのロゴマークだけの看板に美味しそうな匂い。
マンション一階にできたカフェと思われても何の不思議もない。
この保育園らしくないというのは設計コンセプトの一つなのだとか。

そして玄関ドアを開けると
目の前にはインフォメーションの受付のような窓。その大きな窓にはガラスはなく奥はスタッフルームになっている。
入って一番にこどもと保護者とスタッフの目が合うことになる。
この開放的な窓にした理由を聞くと
境界線を曖昧にすることで、こども、保護者、スタッフが自然にコミュニケーションできると考えたのだとか。

このスタッフルームは大きな窓だけでなく
右と左に出入り口がある。
右は玄関からすぐで、キッチンや倉庫にも直結していて、こどものトイレにもつながっている。
左は保育室につながり、左右両方の抜け道にもなっててすごく動きやすい。家庭の家事導線をイメージしたらしい。

そして設計当初予想していなかったこどもたちの成長の発見もあったとか。
「なにげない話の時には木枠の窓から顔のぞかせてねぇねぇお母さん、ていう感じで来て、何か聞いて欲しかったり見て欲しい時はキッチン側のドアから来るんです。
でもケガをしましたとか、これどうしたらいいとか相談の時にはちゃんと保育室側のドアをコンコンてするんですよ。面白いなと思って」
こどもたちなりに入り口を使い分けているようです。

窓といえば、キッチンの窓はガラスの入った木枠で中がよく見えます。
玄関のすぐ横で、こどもたちが台に乗ったらお話しもできる。
ここでもコミュニケーションの壁をできるだけ低くというコンセプトが活かされているようです。

「みんなに料理している姿を見てほしいんです。中で働いている人がすごくきれいに見えるから」と、くみ園長。
「キッチンも服装は自由。くすの木マークのエプロンも毎年色を変えてつくっているから毎日好きな色を選べる。帽子も自由だからばらばらで揃っていない。それぞれ自分を出した服装で素敵でしょう?」
全部見えるからこそいつもきちんとする。
だから日々楽しくセンスも磨かれていくようです。

エプロンもそうだけど色にはこだわっている。と、くみ園長。
「色は感受性に大きく響くと思うんです。
色にもパワーがあるって言うでしょう、例えば壁は木と白だけ。
絵を描くように白い画用紙に見立てているんです」

従来の保育園は壁がピンクだったり、注意書きがあったり、どうしても色彩が多くなりがち。
こどもたちの作品やみんなで作ったオブジェが、いまいる空間でいきいきと見えるといいなという思いであえて色を抑えたのだとか。

逆に色を使ったところがトイレ。
黄色とかピンクとか、ドアの色がそれぞれ違う。
「照明もがんばってペンダントライトにしてもらったんだけど、こどもの評判がすごくいい!」らしい。
「トイレが自分の素敵な部屋に見えるのか、今日はどのトイレに行こうかなって気分で決めてるの。流行があるのか、最近ここ人気だなってその色の前で何人も待っている。面白いでしょ」。

保育園や学校のトイレは狭くて汚いというイメージがここではない。
ひとつずつが広くてきれい。
こどもたちがその日の気分でかわいい色のプライベート空間に吸い込まれていく、そんなイメージでしょうか。
トイレがすごく楽しい場所になっている。

保育園のトイレに色分けや吊り照明なんて贅沢、というのが今までの常識。
こども主体の保育という変わらぬ思いのために変わらないといけないことがある。
新しいこどもたちには新しい常識が必要なのだと教わりました。

最後に、思ってたのと違うことや困ったことはないかと聞いてみました。

「強いて言うなら、デッキのメンテナンスですかね」
なぜかと聞くと、
いい木を使ってるけど、雨ざらしなので2年で表面の塗装を修繕しないといけない。
建築士の保護者にアドバイスをもらい今まで3回は自分たちで塗りなおしたらしい。
それでも木のデッキはこどもたちのお気に入りだし、周りからも評判がいい。
何年か後には、デッキの修繕もくすの木の名物になっている気がします。

とにかくこの園も、とりまく環境も
将来どうなっているのか楽しみです。

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