Initiativesくうねあの取り組み
保育園こそ、働き手の多様性を。くうねあが「ダブルワーカー」を保育士として採用する理由
広島市で保育園事業やベビーシッター事業を展開する「くうねあ」の大きな特徴の1つが、現場で働く人材の多様性です。パート従業員を含めて100人ほどのスタッフが働いていますが、郵便局員とのダブルワークや午前中のみの勤務など、多様な働き方を承認し、個性豊かな人々が揃っています。
保育園といえば、大学や専門学校を卒業し、保育業に専念するエキスパートが揃っている印象が強い中、多様な人材を採用するメリットとはどこにあるのでしょうか?実際に採用の現場を統括する大園長の堀江宗巨(ほりえ・むねお)が、働き手の多様性を生み出す理由と、実際に現場にもたらしたメリットについて語ります。
多様な人材が働く「くうねあ」の保育現場
130人ほどの従業員を抱える「くうねあ」では、さまざまなバックボーンを持つ社員が働いています。2人の子どもを持つシングルマザーや、郵便局員とのダブルワークを成立させている社員など…。年代も20代〜60代以上と幅広いです。
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保育園といえば、保育業務に専念する「スペシャリスト」が揃っているイメージが強いかもしれません。そのため、「くうねあ」が運営する保育園はフランクな雰囲気で、他の園とは違うーといった指摘を受けることも多くあります
多様な人材の採用とセットで必要なのが、働き方の多様化です。くうねあでは「朝の2時間のみ」や「午後3時以降」といった、個人の事情に合わせた働き方を承認しています。原則的に、会社の都合に合わせてもらうのではなく、個人の都合に合わせてシフトを組むといったやり方を進めています。一方、シフトを組むのに苦慮することは多々ありますが(笑)
個性を持った社員が広げる、保育の「幅」
では、なぜ「保育のスペシャリスト」に限らない採用を続けているのか。
1番の理由は、多様なバックボーンを持つ大人と触れ合うことが、子どもの成長にとっていい影響をもたらしてくれるのではないかーという仮説を持っているから。まだ答えは出ていませんが、既存の保育園とは違った属性の人々と触れ合える経験が、子どもの成長にいい作用をもたらしてくれるのではないかと考えています。
実際に採用を進める中で、多様性がもたらしてくれたメリットもありました。属性の違う保育士が子どもと真剣に向き合う中で、既成概念にとらわれない新たな「遊び」を生み出し、今までにない体験を生み出してくれました。
具体例を紹介しましょう。一度、ボランティアとしてイタリア人のスタッフが保育園で働いてくれたことがありました。その人は映像メディアで働いていた経験のあるクリエイターなのですが、ある日、園児が描いた妖怪の絵を用いて、実際に動画で妖怪を動かしてくれたんです。自分の描いた妖怪が「ようかい体操第一」のように動くのを見て、子どもたちはとても喜んでくれました。
他にも、ヨガが趣味の社員が子どもにヨガのレッスンをしたり、洋菓子屋での勤務経験のある社員が、お店を出せるレベルのお菓子をおやつでふるまったり…。既存の保育園では実現しないような「化学反応」が生まれることも、多様な人材がいるからこその大きな効果なのではないかと考えています。
現場の職員が主体性を持つ「プラネット型組織」への挑戦
多様な人材がいることの効果は、子どもたちだけではありません。さまざまな特技やバックボーンを持つからこそ、年代を超えた職員同士の交流もさかんです。波乱万丈な人生を送ってきた社員もいますので(笑)、そういった人の話を聞く中で、「こんな生き方があるんだな」と視野が広がったーーという話も聞いています。
こうした社員同士の繋がりを深めるなかで、目指しているのが、社員が主体性を持って働ける保育現場の運営です。
従来の保育園は、園長や理事長からの上位下達で組織運営が進む「トップダウン型」の組織がほとんどです。ですが、くうねあでは現場で働く社員が主体性を持ち、さまざまな場面で違った個人がリーダーになれる「プラネット型」組織を目指しています。
年代やキャリアにかかわらず、自分の持っている得意分野を保育の場で発揮し、子どもたちに豊かな体験を与えるー。保育目標として掲げる「しぶとく たくましく」を実現する上で、ただのプロフェッショナルではなく、尖った人材を採用していきたいと考えています。
後編では、先述した「多様性のある現場」を保つために実施している対策や挑戦について紹介していきます。