Initiativesくうねあの取り組み
意外に知らない園舎のお話し②
認定こども園くすの木(西原)
前回、東原分園で聞いた園舎のお話しは、初めての分園ということで、こだわりや思いが詰まった、いい意味保育園らしくない素敵なお話しでした。
(前回のお話しはこちら)
そして今回は、くすの木のルーツでもある西原園舎でお話をお伺いしました。
園の案内とお話しをしてくれたのは
認定こども園くすの木 主任、藤井恵美利さん。
2011年12月のオープン時から入社した恵美利さんの第一印象は『殺風景』だったそうです。
「初日の園児は二人、ただただ広いだけで何もない保育園でした」。
マンションの1階全フロアを借りて始まったくすの木保育園。
元々は写真館だったのをそのまま使っていたので、入ってすぐに必要のない壁(ステンドグラス付き)があったり、暗室の名残か扉がやけに重かったりといった具合で、とにかくあるもので始めた手づくりの保育園だったようです。
それから次第に園児も増え、
慌ただしくも楽しい日々を経て5年後に認可保育園になり、
手狭になったところで東原や戸坂などが開園。
それから、ここ西原園舎の改装が始まったということです。
改装に際して、
「くすの木が大事にしたいと思っていることを形にする、というのがテーマでした」と、恵美利さん。
具体的には、
とにかく居るだけで落ち着けること。
卒園児が帰って来たいと思えること。
古いなりにも手の行き届いた場所であること、などなど。
他の開園にともない0~2歳だけの園になったので、
未満児の目線でもいろいろ考えられたようです。
まずは水回りが大変だったようです。
「何せ写真館でしたから、給排水の設備はほとんどない。
調乳室やトイレをつくるのに床を上げて排水の勾配をとるところからはじまりました」と、恵美利さん。
段差はあるものの清潔でやわらかな色のこのトイレはこどもたちも進んで入るらしい。
そしてすごくこだわったのが
入り口すぐ右手に設けた多目的ルーム『ステーションのお部屋』。
恵美利さん曰く
「JRの待合室をイメージしていたんです。
0歳児からいる園なので成長の個人差もありこどもたちの生活リズムもまちまち。
お散歩行っても早く帰ってくるグループもいるし、田んぼのカエルと話し込むグループもいて、ここがみんなが揃う待合場所なんです。
雨具の着替えスペースになったり、お迎えに来た保護者の方とのコミュニケーションの場でもあります。あとお昼寝から早く起きた子の遊び場になったり、ダンス好きが集まるステージになったりもしています」
なんとなく思い描いていた使い方を超えて、
ずいぶんいろんな場面で重宝しているようです。
さらに、この部屋を区切る低い壁にも仕掛けが。
「玄関に向かってベンチがあるんです」
見ると、こどもが座ってちょうど良さそうな低いボックス型のベンチが二つ並んでて、視線を下げると、そのベンチの下の壁はくり抜かれていてステーションのお部屋に通じている。
「ベンチがトンネルになってて、ハイハイしてくぐり抜けたり、ベンチの上に立って中の友達と呼び合ったりとこどもたちのお気に入りの遊具になりました」
こどもたちが自由な発想で遊びだし、ゆずり合ったり、手助けしたりと勝手に成長していく。
これも、くすの木が大事にしたいと思っている形の一つのようです。
改装のポイントはまだまだあります。
入り口の不要な壁は取り払って見通しよくコミュニケーションがとりやすくなり、
床のカーペットは全てフローリング調にし、動きやすく衛生面もかなり向上。
スタッフルームと保育室の壁にはガラスのない窓を設置、みんなが居る気配が感られ安心感も増しました。
異年齢保育をしているので、兄弟姉妹の多い賑やかな家族のようですが、
こどもが使いやすい造り付けのオリジナルロッカーや、部屋の中央の大きなロールカーテンはゆるやかな境界線をつくりそれぞれが落ち着けるスペースを確保。
保育室の照明として天井にダクトレールを付けてスポットライトを設置、
蛍光灯を消せば落ち着いた空間になり、壁に展示したこどもたちの作品が浮かび上がります。
などなど、
恵美利さんのこだわりポイントをこうして並べてみると
安全、清潔なのはもちろんですが『落ち着いた安心感』というのが通底しているようです。
そして最後に、何か困ったことはないかと聞いてみました。
「困ったことというか、夢ですが」
と前置きした後、
「2階にも事務所として一部屋借りているのですが、そこと1階の園を部屋の中で繋げたいんです。
今でも一部は倉庫になってて出し入れが容易になるし、保護者相談も2階でしているんですが、一旦外に出る手間もなくこどもたちの気配も感じられるから安心して話せると思うんですよね」
と、恵美利さん。
後で大園長に聞いてみると、マンションなので難しいですよね~と苦笑いでしたが、
常に大家族のように一緒の空間に居たい、気配を感じていたいという思いは伝わってきました。
くすの木の形が近い将来また見られるかもしれません。