Initiativesくうねあの取り組み
自分が豊かだと子どももきっと、もっと楽しい。寄り道したからこそ見つけた新しい保育士像

- 保護者ライター執筆
- この記事は、くうねあの園児・卒園生の保護者の方に取材・執筆を行なっていただきました。

認定こども園くすの木(以下、くすの木)の園庭には、いつも子どもたちの楽しそうな笑い声が響いています。その中で、子どもたちと一緒にひときわ輝く笑顔を見せるスタッフがいます。彼女こそ、くすの木で保育士として働く豊田萌(めぐみ) さん、通称めぐさんです。
実は、最初から保育士を目指していたわけではないというめぐさん。一度はまったく違う業界も経験しながらも、再び保育の道へと戻り、今はイキイキと働いています。一体何が彼女を保育の世界へと引き戻し、今の原動力となっているのでしょうか?めぐさんのこれまでの道のりから、今後の展望まで、じっくりと語ってもらいました。
高校卒業後、当初は音楽の道を志していためぐさん。実は最初から保育士志望ではなかったようです。
めぐさん
「音楽だけでは食べていくのは難しいと説得されたこともあり、音楽を活かせる免許取得を考えたんです。それで、短大に通って幼稚園の免許を取得しました。幼稚園実習も楽しかったこともあり、『だったら保育士の免許も取ってみようかな』という気持ちで、大学に編入して保育士資格も取得しました。就職活動の際、ゼミの先生から『あなたにぴったりの園があるよ』と紹介されたのが最初の職場です。『絶対に保育士になりたい!』ではなく、どちらかというと“流れに流されて”保育士のキャリアがスタートした、というのが正直なきっかけなんです(笑)」
──新卒で広島の保育園に3年間勤務した後、一度保育業界から離れることを決意したと聞いていますが、どういった理由があったのでしょうか。
めぐさん
「理由は、当時の自分にとって保育園という世界が少し狭く感じられ、『もっと色々な人と関わりたい』という思いが強くなったからでした。その思いから、広島市内のカフェで店員として働くことにしたんです。ですが、現実は理想とは異なり、ただただ忙しい日々に追われることになりました。そんな生活をしているうちに、『本当に自分がやりたかったことは、これだったの?』と思い始めてしまいまして…。」
そんなとき、知り合いだった元くすの木のスタッフの1人から、東京にカフェ併設の保育園があると聞き、上京することにしたそうです。
めぐさん
「東京には面白い保育園があることを知り、すごく興味を惹かれました!実際に働いてみると、保育士はカフェ側の業務に携わることはほとんどなかったのですが(笑)。でも、保育の海外研修に行かせてもらったりと、すごく保育の質向上に力を入れている園でしたね。3年半ほど働いたのですが、本当にいろいろなことを勉強させてもらいました!」
──一度保育の世界から離れていますが、なぜ戻ろうと思ったのですか?
めぐさん
「カフェでの一期一会の出会いも素敵でしたが、保育士は365日ほとんどを子どもと過ごす、深い関わり方をします。子どもの成長を保護者と共に喜び、ときには悩みながら過ごしていくこと。そういった様子を思い出したとき『やっぱりあの仕事って面白かったな』って思ったんです。
あと、子どもたちから毎日『めぐさん!』って呼ばれたり、保護者と毎日顔を合わせて言葉を交わす仕事って他にないと思うんです。保育士としては何気ない出来事なんですが、他では得られない特別な喜びだと気付きました。離れてみたからこそ、こうした保育の良さに気付き、またやってみようと思えました。」
──ブランクに対する不安はありませんでしたか?
めぐさん
「正直ありました。ですが、入職して半年間は0歳児6人のお部屋を担当させてもらい、ゆっくり感覚を取り戻していったので、無理なく保育の世界に戻れました!あと好奇心は強い方なので、どうなるかなっていう不安よりも、ワクワクの方が強かったです。」
東京での保育士経験を経て、コロナ禍をきっかけに広島に戻ることを決意します。もともと『修行のため』の上京だったので、いずれ広島に帰ることは考えていたそうです。
めぐさん
「東京の保育園で働いていたときから、『保護者の方ともっと密な関係を築ける園、地域とのつながりを大切にしている園で働きたい』と思っていました。広島へ帰ることが決まったとき、新卒で働いた保育園の同期だった山下あやさん(現西原園舎・主任)から『うちの園(くすの木)も見てみたら?』と誘ってもらったんです!
ちょうどそのタイミングで、くうねあの古民家(※西原にある古民家の再生事業)プロジェクトが始まりました。古民家や地域のつながりに興味があったこともあり、保育と古民家プロジェクトの両方に携われるくすの木に入職を決めました。」
──古民家のワークショップなどでくすの木の先生を見かけますが、みなさんボランティアで活動されているのですか?
めぐさん
「そうです!スタッフ・保護者・地域の人…いろんな人との繋がりができるので、楽しいですよ。よく『休みの日まで大変じゃない?』と聞かれるのですが、だからこそ、無理なく参加することをモットーとしています。古民家にいるときもガツガツ動くというよりも、ただそこにいてボーっとしていることも多いですし、いろんな人とまったり話したりと、ゆるく活動しています(笑)。前までいろんなことに気張っていたから、古民家で、そんな自分を少し解きほぐしてもらっている感じですね。」
──別の園で働いた経験があるからこそ見える、くすの木の保育の良さとは?
めぐさん
「周りのスタッフが助けてくれること、大人同士の対話が多くて園の運営が円滑なところです。何かあっても1人で悩まなくていいですし、ヘルプを出しやすいので、働きやすいですね。子どものことを軸に置きながら、そこで働くスタッフの環境にもすごく配慮されているなと感じます。今私がいる祇園園舎の幼児クラスは3部屋あるのですが、お部屋の垣根を超えてスタッフ同士で連携して補い合っているところも素敵です!」
他業界も経験し、くすの木で再び保育の道を歩み始めためぐさん。今後の保育士像について聞いてみました。
めぐさん
「昔は『誰からも頼られる存在でなければ』と理想の保育士像を追い求め、『あれもこれもやらなきゃ』と気負っていた時期もあったんです。でも、理想と現実のギャップに追い詰められて、だんだんしんどさを感じるようになり…。そんな経験もあり、今は『まずは自分が豊かで心地良くいることが大切』という考えに原点回帰しました。自分にゆとりがあって物事を楽しめる状態でないと、きっと子どもたちにもいろいろ伝わってしまうと思うんです。」
──素敵なマインドですね!いつも笑顔で子どもたちと楽しそうにしているのも、この考えがベースになっているんですね。
めぐさん
「『自然体で楽しみながら、でも保育士としての成長は止めない』というのが、今の理想の保育士像ですね。そして、『明日もこれの続きがしたいな』と、子どもたちが自ら楽しみを見つけ、主体的に生きていく力を育むサポートをしたいと考えています。そのためには、自分自身も保育士として成長していかなければなりません。子どもたちにとって魅力的な大人であり続けるために、学び続け、さまざまな経験を積んでいきたいと思っています。」
おわりに
インタビュアーの娘も担当してくださっためぐさん。一保護者として、いつも子どもたちと楽しそうに遊んでいる姿が印象的でした。今回のインタビューを通して、彼女が「自分が楽しみながら、子どもたちと共に成長し続けたい」という考えを大切にしていることを知り、普段感じていた彼女の魅力の理由が明確になったように感じます。これからも、この思いを胸に、めぐさんの保育士としての新たな挑戦は続いていくでしょう。
ライタープロフィール
- 端場さん[PTA 会員No.001]※
- 2016年生まれの息子と、2018年生まれの娘を持つ、県北育ちの2児の母。子どもは2人ともくすの木出身。くすの木の好きなところは「のびのびとした園風」「園児の主体性を重んじるところ」「親の昼ごはんよりも美味しい、こだわりの給食」。現在ライターとして、さまざまな媒体で記事を執筆。内々に秘めておくだけではもったいない、くすの木の魅力を余すことなく伝えるために、くうねあWebマガジンの運営に参加。「この保育園に通わせたい」「こんな園で働いてみたい」と思っていただける方を1人でも多く増やすのが目標。
※PTAとはParents Team Authors(執筆・保護者チーム)の略で、執筆を引き受けてくれた保護者の方たちのチーム名です。