Initiativesくうねあの取り組み

2025.07.17

子どもたちに寄り添い、チームを支えるー自然体のリーダー・上岡まりさんのお話

アイコン:保護者ライター
保護者ライター執筆
この記事は、くうねあの園児・卒園生の保護者の方に取材・執筆を行なっていただきました。

広島市内で複数の保育園を運営するくうねあ。その一つ、くすの木保育園戸坂でリーダーとして活躍するのが、入社8年目の保育士・上岡まりさんです。学生時代に日々通った通学路にあった保育園との偶然の出会いが、今では多くの子どもたちや保護者を支える存在となりました。インタビューでは、新卒からの8年間の歩み、リーダーとしての現在、そして保育への思いを伺いました。若手でありながら自然体でチームを支えるまりさんの姿からは、保育という仕事の奥深さと、楽しむ力強さが感じられます。これから保育士を目指す方や、現場で悩む若手保育士さんにとって、大きなヒントと希望を与えてくれるインタビューです。

通学路から始まった「くうねあ」との出会い

広島市東区にあるくすの木保育園戸坂。ここで現在リーダーとして活躍されているのが、入社8年目の保育士・上岡まり(以降:まりさん)さんです。学生時代、自転車で通学していたまりさんがよく目にしていたのがくすの木保育園(現・西原園舎)でした。

まりさん

「マンションの1階に保育園があることに驚きました。園庭がある “独立した建物” のイメージしかなかったので、印象に残っていたんです。」

その後、大学で幼児教育ついて学ぶ中、「乳児と関わる仕事がしたい」と思うように。教育実習を経て、より一人ひとりに丁寧に向き合える保育園を探していたところ、目に留まったのが『くうねあ』のホームページでした。

まりさん

『子どもが主役』という理念と、『とことん遊ぶ』というキーワードを見て、探していた保育園に近いものを感じたんです。」

新卒で選んだ、新規園立ち上げという挑戦

ところが、新卒でいきなり任されたのは、新しくできたばかりの祇園園舎でのオープニングスタッフという役割。右も左も分からない新卒1年目にして、新しい保育園の “ゼロからの立ち上げ” を経験します。

まりさん

「まだ保育士の仕事も知らなかったのですが、新しい挑戦ならやってみようかなと。実際は日々が精一杯で振り返る余裕もないほどで、1〜2年目はとにかく安全に過ごせるようにと必死でした。3年目くらいからようやく要領がつかめてきました。」

祇園で最初に受け持った子どもたちと一緒に年長まで…と思いきや、4年目に戸坂園舎への異動が決まります。

まりさん

「卒園まで見届けたかったけれど、新しい挑戦を受け入れるしかないと前を向きました。戸坂に行ってからも、保護者の方や子どもたちが『いつ戻ってくるの?』って声をかけてくれて、本当に嬉しかったです。」

卒園式には招待され、保護者より先に涙してしまった…というエピソードも。まりさんにとって、祇園園舎で過ごした時間はかけがえのないものになっていました。

保護者との対話が、いまの自分を支えている

保育士として働き始めてから、まりさんが一貫して大切にしてきたこと。それは保護者とのコミュニケーションを大切にすることでした。

まりさん

「毎日必ず一つは、保護者の方にお伝えしたいエピソードを用意するよう心がけていました。大学を卒業したばかりで、自分の話し方に自信がなかったけれど、経験を積まなければ上達しないと思って。とにかく頭をフル回転させながら子どもたちの様子を丁寧にお伝えしていました。お子さんの成長をお話したときに見せてくださる保護者の方の笑顔が、私自身の励みにもなっていたんです。今ではその時間が楽しすぎて、つい話しすぎてしまうくらいです(笑)」

こうした小さな心がけが、保護者との信頼関係につながり、やがて彼女にとってかけがえのない経験となっていきます。

まりさん

「“毎日ひとつのエピソード” が、次第に『この話をお迎えのときに絶対伝えたい』という気持ちに変わっていきました。子どもたちの成長を、保育園の中だけにとどめておくのはもったいなくて。特に戸坂園舎はおうちのような雰囲気があって、『ただいま』と言ってお迎えに来てくださる保護者の方もいらっしゃるんです。そんなあたたかい空気の中で、日々の対話を積み重ねてきたことが、今につながっていると感じています。」

入社8年目、子どもたちからの学びは尽きない

これまでの8年間で、特に乳児クラスを多く担当してきたというまりさん。0〜1歳児の育ちの土台づくりに携わる中で、乳児期の経験がのちの幼児期につながっていくことを実感するようになったといいます。

まりさん

「乳児クラスを担当していて、あるとき幼児クラスのスタッフさんに『乳児で生活の基盤がしっかりできていたからこそ、今の幼児があるんだよ』と言っていただいたことがあって。それを聞いて、あらためて乳児期ってすごく大切なんだなと実感しました。最初の頃は、頭ではそう思いながらも、じゃあ具体的に何をどうすればいいのか分からずに模索していた部分もあったんです。でも、何年も乳児クラスを経験する中で、少しずつその意味が分かるようになってきて。情緒が安定すること、生きる・食べる・寝るといった基本的な生活がしっかり身につくこと―そういった乳児期の積み重ねが、その先の幼児期につながっているんだと、保育を通じて実感するようになりました。そのことに気づいてからは、ますます保育が楽しくなってきました。」

離乳食の進め方ひとつとっても、子どもの発達状況を見極め、場合によっては保護者と相談しながら後期食から初期食に戻す判断をすることも。その経験が、現在は他のスタッフへのアドバイスにも活かされているそうです。

まりさん

「4、5年と保育の経験を重ねる中で、乳児期の食事の関わりが子どもの成長に本当に大きく影響していると実感するようになりました。その積み重ねがうまくいったと感じられる場面もあって、それが自信につながっています。今では0歳児を担当するスタッフから相談されると、『ちょっと様子を見せてもらってもいい?』と声をかけて、一緒に考えることもあります。たとえば、座る姿勢や椅子の高さを少し整えるだけで、子どもが安心して食べられるようになることもあるんです。最近は、そうした自分の経験を少しずつ伝えられる場面が増えてきて、手応えを感じています。」

現在は2歳児のクラスを担当しているまりさん。0〜1歳児を長く経験してきたこともあり、『2歳ってこんなにできることが増えるんだ』と改めて驚きと楽しさを感じているそう。子どもたちと一緒に草木染めやお店屋さんごっこを楽しむ日々の中で、『幼児さんのような遊びが、もう2歳児でも広がっている』と笑顔を見せてくれました。

まりさん

「草木染めなんて本当にできるのかなと思っていたんですけど、やってみたら意外とできて。大人が『無理かも』って決めつけないことって大事ですね。」

最近では、自然物に興味をもった子どもたちの姿から活動が広がり、染め物やカゴづくり、お花を活ける遊びなど、予想を超えた展開が生まれています。

まりさん

「大人が『これをしよう』と決めるのではなく、今子どもたちが好きなことを見つけて、そこに少し手を添える。それだけで、ぐんと世界が広がっていくんです。だからこそ、私自身も一緒に夢中になって、楽しみながら保育ができているんです。」

リーダーとしての挑戦

入社6年目、まりさんは戸坂園舎でリーダー職を任されることになります。

まりさん

「当時、『私で大丈夫かな?』という気持ちもありました。でも、今の園長もよく言っている『頼まれごとは、任されごと』という言葉が頭に浮かんで。任せてくださるということは、きっとできると信じてくださっているんだと思って、『じゃあ、やってみます』とお返事しました。」

実はその少し前から、まりさんの中にはある変化が起きていました。

まりさん

「それまでは、自分のクラスのことで精一杯だったんですけど、戸坂園舎ではお部屋の配置的にも全体が見やすくて。ふとした瞬間に、あそこ今人が足りてないなとか、こうした方がもっとスムーズなんじゃないかなって、気づくことが増えてきて。その都度、当時の主任や園長先生に、『ここ、こうした方がいいかもしれません』って少しずつ伝えるようになっていきました。」

戸坂園舎にはパートスタッフの方々も多く在籍しており、それぞれの得意なことをもっと活かせたら、もっと働きやすくなるのではと考えるようになったといいます。

まりさん

「スタッフ一人ひとりが、日々感じていることや、こうした方がいいんじゃないかなって思っていることって、実はたくさんあると思うんです。でも、それを口に出せる場って意外と少なくて。だったら、そういう声を出し合える雰囲気を作りたいなって思い始めていたタイミングだったんです。ちょうどその頃にリーダー職のお話をいただいたので、これは挑戦しなさいってことだなと。」

若くしてリーダーとして活躍するまりさん。 “任せてもらえた意味がある” と前向きにとらえられるのは、くうねあという挑戦できる環境があるからだそう。

まりさん

「くうねあには『若いうちにいっぱい失敗していいよ』って言ってもらえる環境があるんです。挑戦することを応援してくれる雰囲気があって、『失敗しても学びがあるなら大丈夫だよ』って。そう言ってもらえるからこそ、私もどんどんチャレンジしていこうと思えています。」

戸坂園舎ではここ数年、産休に入られるスタッフが毎年のように続いているそうです。職場の人員が変わることは保育の現場にとって大きな影響を与えるもの。しかし、まりさんはその変化さえも前向きにとらえているようです。

まりさん

「スタッフの人数に対して産休に入る割合が本当に高くて、最初はびっくりしました。確かに毎回慌ただしくなるんですが、結果的にどうにかなってきたんです。『あのときも乗り越えられたから、今回も大丈夫』って。そうやって積み重ねてきた経験があるからこそ、最近はおめでたい報告を聞いても『任せてください!よし、どうしましょう♪』と、どんと構えています。」

現園長のゆいさんとは、よく『超えられない壁はないよね』と話すのだとか。日々起こる変化や困難も、誰かと支え合いながら前向きに乗り越える―そんな姿勢が、スタッフ間の絆に繋がっているのかもしれません。

自然と身についた “周りを見る力” ─原動力の背景にあるもの

リーダーとして、園全体の様子やスタッフの動きに目を配るまりさん。その原動力はどこから来ているのかを尋ねました。

まりさん

「もともとそういう性格なのかもしれません。自分のクラスのことだけじゃなくて、全体を “見ようとしてしまう” というか。人が困っていることに気づきたいっていう気持ちが自然とあるんだと思います。」

まりさんは学生時代、飲食店でバイトリーダーを務めていました。さらに、小学校から高校までバレーボール一筋。実は根っからの “スポーツ系” だったそうです。

ー祇園園舎でお世話になっていたときはそんな印象なかったんですが、実は体育会系だったんですね…!!

まりさん

「水泳やダンスもしてたんですけど、一番続いたのがバレーでした。バレーって常にチームで動くスポーツだから、周りを見ながら動く力がすごく鍛えられたと思います。飲食店のバイトでも、ホール全体を見て動かないといけないから、“気づく力” が自然と身についたのかなって。スポーツもバイトも、1人で成り立つものじゃなかったので、自然と “チーム全体を見る” っていう感覚が身についていったんだと思います。それが今の仕事にも繋がっていて、気づいたら周りを見てる、そんな感覚です。」

見えないところで誰かが困っていないか、力を必要としている人がいないか―。そんな視点を自然と持てるまりさんの強みは、学生時代の経験と積み重ねの中で育まれてきたものでした。

まりさん

「戸坂園舎での配属期間も長くなり、スタッフへの声かけも心がけていきたいと一層思うようになりました。祇園園舎の頃から保護者との日々の対話を大切にしてきた経験が、今はスタッフとの関係づくりにも役立っていると感じます。」

現場で子どもと向き合いながら、スタッフ同士の信頼関係を築き、園全体の雰囲気をよくしていく。そんな橋渡しのような存在になれたらと、まりさんは笑顔で語ってくれました。

プライベートでも全力投球―オンとオフの切り替え方

責任ある仕事を担うまりさんが仕事を頑張れる理由の一つは、プライベートの充実にあると語ります。

ー嵐(ジャニーズ)がお好きなのは祇園園舎のときから知っていたのですが、今も推し活されているんですか?

まりさん

「はい。今は嵐とKing&Princeと、一番推しているのがSixTONESです。年間5グループくらいのコンサートに参戦しています。」

ー県外のコンサートへも行かれるんですか?

まりさん

「コンサートはほとんど県外です。チケットが当たれば、観光も兼ねて行っています。遊んで、楽しんで、美味しいものもたくさん食べて。それがあるから、普段の仕事もがんばれます。行けるコンサートは全部行きたいです!」

“楽しむ時は全力で楽しむ” 姿勢は、まさに仕事への取り組み方と同じ。気分転換の時間も大切にしながら、日々の保育にも真摯に向き合う。そんな姿勢が、保護者や同僚からの信頼を集める理由の一つなのかもしれません。

まりさん

編集後記

保護者とのお迎え時間の会話が楽しいと言っていたまりさん、インタビューも終始楽しく、気づけばロングインタビューとなっていました。毎日の保育にも発見を見つけて楽しみ、休日も好きなことに全力投球。オンもオフも真剣だからこそ、どちらにも豊かさが宿るのでしょう。保護者の方にとっても、これから保育士を目指す方にとっても、まりさんの姿が『こんな先生がいるなら、安心して任せられる』『私もこんな風に働いてみたい』と思えるきっかけになれば、幸いです。

ライタープロフィール

石井さん[PTA 会員No.002]※
2010年・2015・2017年生まれの三人の息子の母です。2013年に長男がくすの木保育園に入園したことをきっかけに、次男三男の卒園まで計11年間、我が子がくすの木保育園で過ごしました。卒園後も古民家で引き続き保育園時代のご家族と交流させてもらっています。今後はくうねあWebマガジンの執筆を通して、長年子どもたちがお世話になったことへのご恩返しができればと思っています。
趣味はお片付け。毎日三人の息子たちと戦いながらおうちを片づけています。

※PTAとはParents Team Authors(執筆・保護者チーム)の略で、執筆を引き受けてくれた保護者の方たちのチーム名です。
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