Initiativesくうねあの取り組み

2025.02.27

子どもたちを笑顔で送り迎え。畑仕事もこなすくすの木の“スーパー運転手”

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保護者ライター執筆
この記事は、くうねあの園児・卒園生の保護者の方に取材・執筆を行なっていただきました。

広島市にある認定こども園くすの木(以下、くすの木)は、保育園では珍しく園バスを所有しています。希望者の送迎を行ったり、園外活動の送迎を行ったりと、毎日大活躍の園バス。それを運転しているのが、大林博文さん(通称ひろさん)です。今回は園バスの知られざる世界を覗いてみるべく、ひろさんにインタビューを行いました。

ひろさんにお話を聞く前に、まずは園バスの役割について簡単にご紹介します。園バスは毎朝、戸坂園舎から東原園舎、西原園舎から東原園舎へと、数名の園児を送迎しています。その後、各園で園外活動を行うことがあれば、ひろさんが送迎を行っているのです。

運送業界一筋。くすの木と縁がつながったきっかけとは

園バス

ー長年ハイヤー(企業役員などVIPの送迎)やスクールバスなどの運行受託管理(自動車の運行や車両の管理などを請け負うサービス)をしていたひろさん。なぜくすの木の園バス運転手となったのでしょうか。

定年まで勤めていた会社でも、幼稚園の園バスの運行をしていました。なので、園バスにまったく縁がなかったわけでもないんです。

定年後も運転手のバイトをしていましたが、たまたま求人情報を見ていたところ、くすの木の園バス運転手の求人を目にしました。条件がよかったのはもちろんですが、大園長先生との面接の際に聞いた、くうねあの理念に共感したのが決め手となり、入職することとなりました。大園長先生はこちらの提案に対し、柔軟に応えてくださいますし、とにかくみんなが働きやすいように動かれているなと感じています。

ー園バス運転手はどんな点にやりがいを感じていますか?

園バスの運転手をしていると、毎日元気な子どもたちの姿を見ることができます。自然とこちらも元気がもらえて気持ちが明るくなるので、「園バス運転手をやっていてよかったな」と思いますね。

定年後にデイサービスや工場への送迎など、いろいろな分野の運転手をしていましたが、やはり園バスが一番楽しいというか、性に合っているなと感じます。

子どもの安全を守る、ひろさんの徹底した安全管理

園バス

ー子どもの命を預かる大変な仕事ですが、園バスを安全に運行するために行っていることを教えてください。

前職は、運行管理者という国家資格を活かしながら仕事をしていました。なので、運行前点検など基本的な確認事項は漏れなく行っていますね。

また、飲酒運転は絶対にあってはならないことなので、平日はほとんど飲みませんし、飲むことがあっても前日の20時までにやめるなど、節制をしています。家でアルコールチェックをしてから出発し、バスに乗る前にもう一度アルコールチェックをしてOKが出てから、運行開始するようにしています。あとは毎日出発前に大園長先生と出会うので、世間話がてらその日の私の状態をチェックしてもらっています(笑)

運転時に急に意識をなくすなど、万一のことがあってはならないので、毎日必ず血圧と脈拍を測定し、異変がないかセルフチェックも行っていますね。

ー健康維持のためにジムへも通われていると聞きました。

毎月10日くらいはジムへ通っていますね。やはり健康状態が悪くなると、思考力・判断力が鈍り、安全運転ができなくなるので、基本的な体力を維持して病気やケガをしないよう、努力しています。毎年行われる健康診断では、動脈硬化測定などのオプションも付けて、異常がないか気を配っています。

ー他県で園バスへ子どもが取り残される悲しい事故がありましたが、くすの木の園バスではどのような対策をしていますか?

くすの木の園バスは、エンジンを切ると車内をチェックするようアナウンスが流れ続けるんです。止めるボタンは車内後方にあるので、自然と車内をチェックする仕組みとなっています。人だけでは「確認しただろう」という気持ちが芽生えることもあるので、機械の機能にも頼り、確実に車内をチェックすることで、下ろし忘れを防いでいます。

ー園舎間で毎朝子どもの送迎を行う際、乗れなかった子どもがいないか、下ろし忘れた子どもがいないかチェックする際、どのような工夫をされていますか?

その日の利用者名簿をチェックするのと、保護者様から預かった連絡帳の名前・冊数を名簿と照らし合わせて、確実に子どもたちを乗せています。私ともう1人添乗する保育スタッフがいますので、2人でWチェックを行います。そして最後に車内チェックをすることで、下ろし忘れを防いでいるんです。

園バス運転手なのに保育の場面にも携わるひろさん。子どもたちにも大人気

ー園だよりを見ると、ひろさんが外遊びや畑作業などに参加している様子を見かけます。運転手が保育にも携わるのは珍しいと思うのですが、最初から業務内容に含まれていたのですか?

いえ、私から携わらせてほしいと、大園長先生にお願いしました。具体的な話になるのですが、私は時給制ではなく固定給をいただいています。一般的に園バス運転手は運行時間のみ時給が発生するところが多いのですが、大園長先生が時間に追われずゆとりを持って運行できるよう、配慮してくださったのです。

本当でしたら、園バスの運行が終われば帰宅してもいいのですが、せっかく働きやすいよう配慮していただいているので、何か自分にできることはないか考えた結果が、保育にも参加することでした。運転するだけなら誰でもできますが、私だからできることをやりたかったんです。

大変じゃないかと言われることもありますが、子どもたちと触れ合うことでエネルギーチャージができていますよ(笑)

ー毎日園バスに乗らない子どもはひろさんと会う機会が少ないと思いますが、どの子どもも「ひろさん!ひろさん!」と大人気ですよね。

現在、園バスはお山園舎(祇園分園)に置いているので、自然とお山園舎の子どもと触れ合う機会が多いですね。具体的には、外遊びをしている子どもたちに混ざって遊ぶことで、顔と名前を覚えてもらっています。

ーお山園舎の畑の管理はひろさんがされていると聞きました。

実家で畑をしていることもあり、お山園舎の畑は私が管理しています。お山園舎が開園したときは、草だらけでほぼ野生にかえっている状態でしたね。そこから畑を開拓し、野菜が育つ環境に整備しました。近年は、サツマイモ・キャベツ・玉ねぎ・じゃがいもなどを子どもたちと一緒に育てています。

種まきからはじまり、水やりなど日々のお世話、収穫と一連の流れを体験することで、野菜を育てるよろこびと大変さを知ってもらえるかと。自分たちが育てた野菜はよりおいしく感じられると思うので、食へ興味を持つきっかけにもなるのではと思っています。

また、畑の一角はあえて草を残すようにしています。そうすることで、バッタやカエルなどが住み着き、子どもたちが触れ合うこともできるからです。

ー最初気付かなかったのですが、くすの木フェスではカメラマンをされていましたよね?

そうです。カメラが趣味なのもあり、くすの木フェスなどの行事では私が写真撮影しています。これからもいろいろな場面で、子どもたちを撮影しようと思います!

おわりに

毎日子どもたちが安全に園バスを利用できているのも、ひろさんの安全運転や毎日のコンディション調整の賜物であることが分かりました。また、自身の業務の範囲だけにとどまらず「自分だからできることはないか」と探し、保育に携わっていらっしゃるのも印象的でした。これからも、安全運転で子どもたちの笑顔を守っていただきたいですね。

ライタープロフィール

端場さん[PTA 会員No.001]※
2016年生まれの息子と、2018年生まれの娘を持つ、県北育ちの2児の母。子どもは2人ともくすの木出身。くすの木の好きなところは「のびのびとした園風」「園児の主体性を重んじるところ」「親の昼ごはんよりも美味しい、こだわりの給食」。現在ライターとして、さまざまな媒体で記事を執筆。内々に秘めておくだけではもったいない、くすの木の魅力を余すことなく伝えるために、くうねあWebマガジンの運営に参加。「この保育園に通わせたい」「こんな園で働いてみたい」と思っていただける方を1人でも多く増やすのが目標。

※PTAとはParents Team Authors(執筆・保護者チーム)の略で、執筆を引き受けてくれた保護者の方たちのチーム名です。
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