Initiativesくうねあの取り組み
社員の個性を生かし、健全な保育をつくるために。働き手のズレを修正するくうねあの「階層別研修」
広島市で保育園事業やベビーシッター事業を展開する「くうねあ」の大きな特徴の1つが、現場で働く人材の多様性です。パート従業員を含めて100人ほどのスタッフが働いていますが、郵便局員の副業や午前中のみの勤務など、多様な働き方を承認し、個性豊かな人々が揃っています。
前編ではそんな多様性のある人材を採用するうえでのこだわりや、現場にもたらしたメリットを、大園長の堀江宗巨(ほりえ・むねお)が紹介。後編では、現場の多様性を担保するために実施している「階層別研修」や、保育士から現場のマネージャーを育てる試行錯誤について語ります。
働き手の多様性を保つ「階層別研修」
20代〜70代の幅広い年代から130人ほどがあつまっている「くうねあ」。バックボーンも人それぞれで、保育士資格を持ちつつも、副業をしている人や、2人の子どもを持つシングルマザーなどさまざまな属性を持つ社員が働いています。
多様性溢れる職場ですが、ただ採用して放置しているだけでは、それぞれの特性を生かしたり、他の社員を尊重した保育を実現することはできません。そこでくうねあでは、「20代」「30代」「40代」「50代」「60代以上」と、それぞれの年代で保育に携わる上で必要な知識やマインドを教える「階層別研修」を開いています。
「保育」への向き合い方や働き方への考えは世代によって異なるものです。例えば、50代以上の世代には、指導のために「げんこつ」をしても良いと考える人もいる。男の子に「お兄ちゃんなんだから」などと、古いジェンダー感覚に基づいたコミュニケーションを悪気なくしてしまったりする人がいます。
働き方に対しても同様です。若い社員の労働への向き合い方は時代と共に変化しますが、価値観をアップデートできなければ、ハラスメントの原因になってしまう。そういったズレを修正する意味でも、現代の保育がどのようなもので、どう接するべきか。「先生」と呼ばれる以上、弁えないといけないことは何かを教え、本人の課題意識とともにすり合わせをしていくのです。
保育士を「現場マネージャー」に育てる新たな挑戦
20〜30代の若い社員に対しては、保育に向き合う上で必要な知識や、論文などを渡して勉強を促すこともあります。ただ漠然と保育をするのではなく、マインドと知識の平準化を行い、社員が「くうねあではこう考える」という共通認識を持つことで、齟齬のないコミュニケーションが生まれるようになりました。階層別研修を通じて、幅広い年代の社員でも意識を統一することが可能になっています。
また、若い社員には保育士としての「スペシャリスト」を目指すだけでなく、現場を統括する「マネージャー」としてのキャリアもあります。現場で園児と触れ合うことをやりがいだと感じる「スペシャリスト」と、ある部署で社員を束ねる「マネージャー」。40歳前後になった社員には、どちらのキャリアへ進みたいかを面談で聞くようにしています。
こうしたマネジメント職は、外部から招聘する考えもありました。ただ、長年苦楽を共にした社員だからこそ、現場に対してリスペクトをもった「保育士出身」ならではのマネージャーが育つと感じ、挑戦しているところです。現在では、保育士として働いていた3〜4人がマネージャーとしてのキャリアを選び、リーダー研修を受講するなど、新たなキャリアに向けて勉強を続けています。
既存の保育園とは違った環境、キャリアパスに戸惑う社員もいるかもしれません。それでもついてきてくれる社員には感謝しかありませんし、「くうねあでよかった」と思ってもらえるような環境を作っていかなければーーと考えています。