Initiativesくうねあの取り組み

2024.02.09

くすの木のキッチン―①
管理栄養士が何人もいるくすの木の給食室

くすの木の特長の一つに「手を抜かない給食」があります。
保護者からはレシピを教えて、と何度も言われ、年度末アンケートでも美味しいと必ず書かれるくすの木の給食。
その美味しい秘密を探るため、くすの木にお邪魔しお話しを伺ってきました。
今回はその一回目、給食調理のリーダーを勤める齋藤ゆうみさんのお話しです。

国家資格である管理栄養士、
配置義務はないものの、通常一人でもいれば良いと言われる有資格者が何人もいると聞いて、まずキッチンスタッフの資格について聞いてみました。
最初に言われたのは
「うちのキッチンスタッフは、“キッチンさん”って呼ばれています。
家のキッチンを連想してほしいから。
園児も保護者もスタッフもみんなそう呼んでくれます」
あ、はい。それではキッチンさんの資格について…。

資格じゃなくて人柄で採用。

「キッチンさんは全園合わせて17人。資格はいろいろですね」とメモを見ながら、時に思い出すように話し始めてくれました。
整理すると
管理栄養士が10人
栄養士が2人
調理師が3人
子育て支援員が1人
その内、保育士が2人いて
なんと
看護師も1人
(看護師のスタッフはわが子の入園見学で大園長の話に共鳴し自分がキッチンスタッフとして入園したのだとか)

「ここは、資格でなく人柄で採用してくれるから」とゆうみさん。
ゆうみさんご自身も含めて管理栄養士は10人もおり、他にもバラエティ豊かな資格があるのはそのためなんですね。
同じ志を持つものが自然と集まるのはよく聞きますが、ここの求心力は幅が広い。
ともあれ、今は全員が何らかの資格を持っているようです。

給食ではめずらしい、一汁三菜。

さらに美味しさの秘密を探ろうと、調理でのこだわりを聞くと
「素材と調味料」
そして
「一汁三菜」
とキッパリ回答。

特に一汁三菜は、栄養のバランスを考えるとこうなるのだと。
保育給食でこれはなかなかないらしい。

そのこだわりで目に見える効果はあるのですか?と失礼な質問をぶつけると
「息子と私です」と即答。
???
個人差はありますがと前置きのあと
「基礎体温が上がったんです。免疫力が上がったってことですね」
とゆうみさん。
なんでも2歳になる息子さんはここの園児。
スタッフ給食といって園児の1.5倍の量の同じ給食もスタッフは食べられる。
それで一年間、息子の基礎体温は0.3℃アップし、
ゆうみさんは35℃台が36台になったそうだ。
発熱、風邪も少なくなり、便通も良くなったとか。
なにより、消化が良くて吸収が早いから夕方にはお腹がペコペコに、
ミネラルや食物繊維も多くて栄養価高く…と一気に話してくれました。
とにかく息子さんは元気なようです。

食育の悩みに近道はない。

よくある保護者からの質問で、好き嫌いがある子にどう食べさせればいいですか?というのがあるのだとか。聞けば
こうすればいいです。という単純な話ではないらしい。
食べ物の好き嫌いだけでなくアレルギーもある。
それでなくても、その日の体調や気分、食材の食感や臭い、見た目でも嫌いになる。
ゆうみさんが気を付けているのは、
「無理強いはしないが、関わりは持たせる」ということ。
そして対話だと言う。

こどもとも担任とも話をして工夫を重ねる。
例えば食材の切り方を細かく変えたり、焼くのを揚げたり、またはカレー味にしたりとか。
調理温度を上げると苦みがとれることもあるとか。
「その積み重ねでようやく、食べられるようになったり、量が増えたりします」
と、ゆうみさん。
なるほど、この手間暇がこどもの成長に繋がるのですね。
食の奥の深さの一端に触れた気がしました。

手間暇といえば、「手作りおやつ」もくすの木の名物だとか。
旬の素材を大事にし、季節の行事とからめておやつを考案している。
ハロウィンのかぼちゃクッキーとか、定番だけど今までやってないメニューを月1回、キッチンミーティングで話し合うらしい。
その会では、おやつだけでなく、よく食べたメニューやそうでなかったメニューの原因や改善点を導いたり、作り手を代えてみたりと研究と工夫に余念がない。

このスタッフもよく勉強するところは、
くすの木の保育理念がよく浸透している一つの例なんでしょう。

地域でこどもを育てる。

そして最後に
これから挑戦してみたいことがありますか?と聞いてみました。
「私がそうだからわかるんですけど」と言ってから
「保育園にこどもを預けるお母さん、お父さんって忙しいんです。
仕事終わって迎えに来て、スーパーで慌ただしくお買い物、
こどもに申し訳ないと思いながらも添加物の多い食品になってしまう」と。

そこからのゆうみさんの妄想?を要約すると
苦労して調達して、たくさん考えてみんなで調理した給食だけど
それは園に来てくれるこどもたちだけが食べるんだなと思い当たり
それをもう少し多く作って総菜にして
キッチンカーでそれぞれの園を回れば
「迎えに来てくれた保護者にも販売してあげられるじゃないかなって」
ということらしい。

収益的には厳しいと思うけどと付け加えられましたが、
地域でこどもを育てる、というくすの木の思いを
園のほうからも積極的に関わろうとする
広く遠い視点の発想にハッとさせられました。

くすの木のキッチンさんの料理を家族で食べたいと
本気で思ったインタビューでした。

次回は、さらに美味しさと人気の秘密を探るため
くすの木の給食の基礎をつくった堀江大園長と原清美さんにお話しを伺いました。

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