Initiativesくうねあの取り組み

2025.06.19

異文化で培った「楽しむ」マインドで、子どもも大人も輝く保育を

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保護者ライター執筆
この記事は、くうねあの園児・卒園生の保護者の方に取材・執筆を行なっていただきました。

株式会社くうねあが運営する、認定こども園くすの木で主任を務める折居真由香(まゆか)さん。高校卒業後すぐにアメリカへ渡り、異文化の中で保育の道を見つけました。

くすの木が認可外時代から働いているまゆかさんは、くすの木の大園長先生の堀江さんから厚い信頼を寄せられています。大園長先生は彼女について、「指示が明確で子どもにも伝わりやすいのが強み。若いうちからマネジメントの経験を積めば、将来分厚いマネジメント層の一翼を担っていただけると思い、主任を打診しました。」と語っています。

現在は「子どもも大人も楽しめる環境づくり」をモットーに、くすの木の保育を牽引しています。彼女の歩みと、くすの木が目指す未来について詳しく伺いました。

高校卒業後に渡米したまゆかさん。保育士を目指していたわけではなかったそうですが、なぜ保育業界に携わることになったのでしょうか。

まゆかさん

「本当は中学校卒業後すぐにアメリカへ行きたかったんです(笑)でも、両親にせめて高校は卒業してと言われたので、それまで待っていた感じですね。元々小さなころからアメリカの文化に興味があって、もっといろんなことを知りたいと思って渡米しました。」

ー渡米が夢だったのですね!では、アメリカでの生活に不安を感じることもなかったのですね。

まゆかさん

「そうですね!若い頃ならではだと思うのですが、先のことなんてまったく考えずに、とにかく今、目の前の楽しいことに夢中になっていたので、不安よりも楽しいが勝っていました(笑)」

ーなぜアメリカで保育を学ばれたのですか?

まゆかさん

「元々アメリカで保育の勉強をしようと思っていたわけじゃないんです。語学学校に通っている人の大半が、短大進学を目指していて。『じゃあ、私も短大に入らなきゃ』ってなったときに、何を学びたいか考えたんです。そのときに保育士としてアメリカで働いて、経験を積んでみるのもいいかなってところに着地しました。」

ーアメリカの保育園の想像がつかないのですが、日本の保育園と違いはあるのですか?

まゆかさん

「割と日本のようなカリキュラムが少ないように感じます。子どもたちがやりたいようにやるっていうのが、アメリカの保育のベースかなと。ランチと午睡(お昼寝の時間)は決まっていますが、どこで何して遊ぶっていうのは子どもたちが自由に決めていましたね。」

ー何だかくすの木の保育と似ていますね!では、アメリカの働き方ならではの大変さはありましたか?

まゆかさん

「保育士としての仕事が終わったあとに、急にベビーシッターの依頼が入ることですかね。アメリカはベビーシッター文化がメジャーなので、みんな気軽に依頼をしてくるんです。『今日の夜、予定がなければ家に来てほしい』『今週末、ベビーシッターを引き受けてくれる?』など、保護者から依頼が入るので、バイト感覚でベビーシッター業務をしていました。大変でしたが、楽しかったですよ。」

帰国後は英会話教室や民間企業に就職。くうねあと出会うまでのエピソードとは…?

まゆかさん

「本当はもっとアメリカにいたかったのですが、ちょうど同時多発テロが起きて、ビザの申請がかなり厳しくなったんです。同僚や保護者から署名や嘆願書も集めたのですが、更新ができず、アメリカを離れることになりました。」

ー帰国後は保育士として働こうと思わなかったのですか?

まゆかさん

「そうしたかったのですが、アメリカの保育士資格は、日本では使えないことが分かりまして…。帰国時24歳ぐらいだったと思うのですが、そこからまた短大に通って保育士資格を取るのは両親にも申し訳なかったので、英会話教室や民間企業で働いていました。ですが、30歳を目前にして『やっぱり子どもと携わる、保育の仕事がしたい』と思ったんです。短大に通うのは難しかったので、独学で資格の勉強をしました。」

ーその間にくうねあに出会ったのですか?

まゆかさん

「保育士資格を取るまでどの園でも働けないので、一旦ベビーシッターをしつつ勉強をしてみようと思ったんです。いろんなサイトでベビーシッター登録をしてみたら、とある方から声をかけていただいたのですが…それが大園長先生でした。まだそのときは『アンファンス(くうねあが運営するベビーシッターサービス)』という名前ではなく、『今からベビーシッター業務を始めます』という黎明期でしたね(笑)試験に合格するまで、ベビーシッターとしてちょこちょこ働かせてもらいました。」

ーでは保育士資格を取得されて、本格的にくすの木で働くことになったのですね。渡米経験や英会話教室で働かれていたということもあり、くすの木の保育で英語を使うこともありましたか?

まゆかさん

「くすの木の保育は『生活の一部』として考えられているので、それはしなかったですね。一般家庭で急に『今から英語のレッスンをしましょう』とはならないですよね。だから、私もわざわざ保育に英語の要素を取り入れることはしませんでした。ですが、海外ボランティアさんを受け入れるときは、通訳のような役割はしていました。」

現場から主任業務への転換。まゆかさんがマネジメントをする上で大切にしているものを聞いてみました。

まゆかさん

「2人目の育休中だったのですが、大園長先生から主任をやってみないかと声をかけてもらいました。当然現場に戻るものだと思っていたので、驚きましたね(笑)私は復帰後から現在も時短で働かせていただいているので、主任なのにコアな時間でしか対応ができないという点がネックでした。それでも大園長先生がいいとおっしゃったので、主任を引き受けることにしたんです。」

ー主任として園全体のマネジメントをする上で大切にしているものを教えてください。

まゆかさん

「スタッフとの関係づくりを大切にしています。私との間もそうですが、スタッフ間の関係性もよくないと、スムーズに運営できないので気を配っています。あとは、いつスタッフの休みが出ても円滑に保育ができるよう、対応を常に考えています。ですが、くすの木は『お互い様精神』が根付いているので、そこに助けられている部分もありますね。」

ーほかの方にインタビューした際も、『くすの木はアットホームで働きやすい』と聞きますね。

まゆかさん

「保育園は女性ばかりの職場なので、環境によってはギスギスしやすいのですが…。くすの木は保育業界一筋という方より、別の業界も経験した上で保育士をやっている方が多いので、いろんな考え方が入ってきて、より柔軟に動ける環境になっているのかなと思います。」

ー主任ならではの大変さとは?

まゆかさん

「まずは、子どもと一緒に楽しめる時間がグッと減ったことですかね。そもそも子どもと楽しく過ごすのが好きなので。あとは、一歩引いたところから見守るところも大変な部分です。現場のスタッフを育てていく立場なので、伸び悩む部分に対してサポートをするのですが、人によって最適な伝え方が違うので、見極めが難しいです。すべて答えを導くだけではスタッフの成長に繋がらないので、スタッフが自分なりに受け取れるようなヒントの出し方ができるよう、工夫しています。」

日々の業務に難しい部分はあると感じつつも、決して大変だとか嫌だとかマイナスには捉えていないと語るまゆかさん。ポジティブなマインドを手に入れることになったきっかけがあるようです。

まゆかさん

「何でも楽しんでみようってスタンスは、渡米経験が影響しているのかなと感じます。あの頃は若かったので、怖いものなしで、楽しいことだけ考えてどんどん突き進んでいました。ですが、楽しいことを見つけて進んでいくうちに、状況を打破できることもあるんだと気づきましたし、一旦不安は置いておいて突き進む力も大切だと分かったんです。そのときから、ワクワクすることを見つけて、どんどん飛び込んでみようって気持ちは今も変わっていません。」

ー素敵な考え方ですね!

まゆかさん

「あとは、自分が楽しいと思えないと、周りにも伝わるじゃないですか。例えば保育の中で『嫌だけど、仕事だから仕方ない』ってネガティブになってしまうと、きっとその感情は子どもたちにも伝わると思うんです。それよりも、『どこかにワクワクする要素はないかな?』って探してみて、子どもたちと一緒に楽しむほうが、みんな幸せになれると思うんです。」

ー主任としてたくさん知識を吸収しないといけないと思うのですが、それらも大変よりも楽しいと感じますか?

まゆかさん

「もちろんいろんなところにアンテナを張り巡らせないといけませんが、やっぱり楽しみのほうが勝っています。『こういうことをやれば、こう繋がっていくんだ』って知識を得たときに、園全体で共有してみんなで変わっていく体験ができると楽しいです!ゆくゆくは子どもたちの『楽しい』にもつながっていくので、その輪が広がるほどワクワクしますね。そうなるまでに、たくさん話し合いだったり勉強だったりが必要ですが、それ以上に得られるものって、きっと大きいと思うんです。」

大人も子どもも『楽しい』と思えるために、くすの木が実践していることを聞いてみました。

まゆかさん

「くすの木は生活の一部という考えがベースだとお話しましたが、そんな環境にするには、保育の知識だけでは不十分だと思うんです。子どもたちがおうちのように過ごせる環境は、無理矢理作るものではなくて、自然となっていくものなのかなと。そのためには、外部を見て保育以外の視点からいろんな情報を取り入れる必要があります。
例えば、今私がいる西原園舎はキッチンがオープンではなく、子どもたちが何気なくキッチンをのぞくことは難しいんです。なので、他の園舎のようにオープンなキッチンになるよう改装計画中です。そのために空間づくりの参考として、福岡に研修に行かせてもらいました。保育以外のエッセンスを取り入れる研修が多いのも、くすの木ならではだと感じています。」

ー幹部層だけでなく、スタッフ全員が保育知識以外の研修を受けることもあるのですか?

まゆかさん

「今年度最初の研修では、お花屋さんを招いてアレンジメントの講義を受けました!くすの木はお散歩が多いので、子どもたちが度々いろんな草花を摘んで帰るんです。今まで水を張った器に入れるだけだったのですが、『せっかくならキレイに見せたいね』とくみさん(現在全体を統括する小園長)と話したのがきっかけで。プロに教わった方法で生けると、何でもない草花がとても素敵に見えるんです。それを見て子どもたちが『楽しそう!自分もやりたい!』となれば、保育にもつながりますよね。」

最後に今後の展望をお願いします。

まゆかさん

「子育てをする上で、育児だけでなくいろんな悩みが出てくるのですが、そんな悩みも丸ごと解決できるような場所でいたいなと思います。そのためには園の運営だけでなく、地域と手を携え合っていけるような取り組みもしたいですね。
あと、大園長先生がとあるイラストをもとに理想の未来図を教えてくださったことがあるんです。マンションの中に街があるイラストだったのですが、保育園・病院・地域などいろんなコミュニティが入っていて。大園長先生は『これを目指しています』と。壮大な構想なのですが、切れ目のない支援を実現するには保育園だけでは不十分ですし、いろんなコミュニティを運営することで、園・家庭・地域の三方よしが叶いますよね。そのために、毎年大園長先生がこうしていくと決めた方針に近づけるよう、園運営を頑張っていこうと思います!」

おわりに

終始笑顔でインタビューを受けてくださった、まゆかさん。仕事は決して楽しいことばかりではなく、時に辛いこともありますが、それでも楽しむことを忘れない姿が印象的でした。くすの木を運営する1人として、子どもも大人も楽しめるような環境づくりに励んでおられる話をお聞きし、くすの木はきっとどんどん進化していくのだろうと感じました。

ライタープロフィール

端場さん[PTA 会員No.001]※
2016年生まれの息子と、2018年生まれの娘を持つ、県北育ちの2児の母。子どもは2人ともくすの木出身。くすの木の好きなところは「のびのびとした園風」「園児の主体性を重んじるところ」「親の昼ごはんよりも美味しい、こだわりの給食」。現在ライターとして、さまざまな媒体で記事を執筆。内々に秘めておくだけではもったいない、くすの木の魅力を余すことなく伝えるために、くうねあWebマガジンの運営に参加。「この保育園に通わせたい」「こんな園で働いてみたい」と思っていただける方を1人でも多く増やすのが目標。

※PTAとはParents Team Authors(執筆・保護者チーム)の略で、執筆を引き受けてくれた保護者の方たちのチーム名です。
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