Initiativesくうねあの取り組み

2024.08.06

おもちゃに込めた願い。くすの木がとことんおもちゃにこだわる理由とは

アイコン:保護者ライター
保護者ライター執筆
この記事は、くうねあの園児・卒園生の保護者の方に取材・執筆を行なっていただきました。

くすの木保育園・認定こども園くすの木では、主にヨーロッパ製のおもちゃを取り入れています。子どもたちは何気なく遊んでいますが、実は保育園に導入するおもちゃとしては高価なものが多いのだそう。また、キャラクターのおもちゃは一切導入しないなど、強いこだわりがあります。なぜ今のようなスタイルになったのか、堀江宗巨大園長に理由を伺いました。

おもちゃがない時期があったからこそ、おもちゃへこだわる

子供

まずは、なぜ大園長はおもちゃへのこだわりを持つようになったのか、そのルーツを探ってみました。

ー保護者から見てもおもちゃへのこだわりがすごいなと思うのですが、そうなるきっかけはあったのでしょうか?

今はどの園でも潤沢におもちゃがある状況ですが、創業当初はおもちゃらしいおもちゃが、ひとつもありませんでした。新聞紙や段ボールなど、おもちゃとして使えそうなものは何でも取り入れましたね。

いわゆる“おもちゃ”ではないものでも、子どもたちが楽しんでいる様子を見て「何でも遊べるなんて、子どもはすごいな」と思ったのですが、実はそうでないことに気付いたんです。新聞紙や段ボールはとてもシンプルな材料で、だからこそ使い方は無限大なんだと、子どもたちが遊ぶ様子から気付きを得ました。

創業当初の様子は、こちらの記事をぜひご覧ください。
園児2人、スタッフ5人の「不安な」スタート――くすの木保育園が地域に受け入れられるまで。くうねあ・堀江大園長インタビュー #002

ーそこから今のこだわりのおもちゃにたどり着くまでの話を聞かせてください。

おもちゃを購入できる状況になったとき、どんなおもちゃにしようか考えたのですが、シンプルに「いいおもちゃを揃えたい!」と思いました。“いいおもちゃ”というと漠然としていますが、私は「単純構造のもの」だと考えています。

例えば積み木は、まさに単純構造ですよね。使い手の創造力や発想力で、いかようにも使えます。お家を作る・並べて道路にする・ひたすら高く積み上げる・おままごとの材料にする……。ひとつの方法に捉われず、自由に遊べるからこそ、どんどん好奇心を育めるんです。

創業当初におもちゃがなかったからこそ、「シンプルイズベスト」の考えにたどり着いたのかもしれません。

ーそれもキャラクターのおもちゃを導入しない理由のひとつでしょうか?

キャラクターのおもちゃの多くは、使い道を限定されることが多いんですね。もちろんキャラクターに熱中することは悪くありませんし、そのようなおもちゃが子どもにとってプラスになることも多々あると思います。

しかし、子どもはずっと同じキャラクターが好きかと言うと、そうではありません。飽きてしまうと、そのおもちゃでは遊ばなくなってしまいます。また、ご家庭にはキャラクターのおもちゃがあるはずなので、あえて園に導入する必要はないかと。

ーヨーロッパ製のおもちゃが多い理由とは?

ヨーロッパには「古いものを大事にする」という文化が根付いています。つまり、ヨーロッパ製のおもちゃは昔から遊ばれてきたものが多いんですね。日本にも素敵なおもちゃはたくさんありますが、シンプルで長く遊べるおもちゃはヨーロッパ製のものが多いので、自然と多くなっています。

遊びは子どもだけのものではない

おもちゃ

園のおもちゃはシンプルでデザイン性にも優れている反面、大人から見るとどうやって遊ぶのだろうと思うおもちゃも多々あります。実際、子どもたちは楽しく遊べているのか尋ねてみました。

ー小さい子どもが遊ぶのは難しくないのでしょうか?

単純なおもちゃは奥深い魅力を持ちますが、やはり子どもが「楽しい!」「こうやって使うといいと思う!」となるまでは、時間がかかります。なので、いくらいいおもちゃを揃えても、子どもたちに遊びを任せっきりにすると、楽しさを見出せない子どもも出てくるんです。

ー子どもが楽しく遊ぶための工夫はありますか?

そこはスタッフの腕を信頼していますね。まずはスタッフが「こうやって遊ぶんだよ」「こうしたらもっと楽しくなるんじゃないかな」など導入することで、子どもも遊びやすくなります。

とはいえ、スタッフ自身がおもちゃに対する楽しさを見出せないと、子どもも見抜いてしまいます。大人も本当に面白いと思うから、子どもも自然と楽しく遊べるようになるんです。そのために、週末になるとスタッフがおもちゃを借りて、自分の家庭で遊んでみることもあります。

ーある程度大人の介入も必要なのですね。

遊び=子どもだけのもの、と思われがちですが、脳を刺激するような遊びには、大人と子供が一体になる必要があると考えます。もちろん子どもだけで遊ぶことも、社会性を育む上で必要です。しかし、時には大人が加わることで遊びに深みが増し、子どもの創造力や好奇心を深められると思います。

遊びは、子どもと大人の共同作業です。もし他の園を見学される際は、子どもと大人がどう遊んでいるかチェックするといいかもしれませんね。

いいおもちゃ=知育玩具ではない

おもちゃと子供

園にあるおもちゃは、いわゆる知育玩具と呼ばれるものですが、大園長はその呼び方は保育の現場では適当ではないと言います。

ー園のおもちゃは知育玩具ではないのでしょうか?

私の考えでは、知育玩具の呼び方はビジネス的な意味合いが強いんです。単に「おもちゃ」と表記されるよりも「知育玩具」と表記されるほうが、購買意欲をそそられませんか?

実はどんなおもちゃにも知育要素は付随されるので、保育の現場ではその呼び名は適当ではないと思います。極端に言えば、新聞紙も知育玩具のひとつですよね。新聞紙は本来読むものですが、発想次第でモノ作り、飾り、包装……さまざまな姿に変化するので、知育要素があるんです。

おもちゃ自体に知育要素があるのではなく、人が使うことで知育要素が付随されると思うので、おもちゃを購入する際は知育玩具の表記に捉われることはありません。

ーおもちゃは大園長が見繕っているのですか?

園のおもちゃは、すべて安佐南区長楽寺にある「木ままや」で購入しています。私が厳選して購入するのではなく、木ままやの掛谷さんがおすすめするおもちゃを購入しているんです。

おもちゃにはこだわっていますが、私自身におもちゃの専門知識はありません。いいおもちゃを導入したいと思っていたところ、ご縁があり木ままやの掛谷さんと出会いました。

私の遊びに対する考えに共感してくれ、さらに専門知識を持つ人とくれば、頼らないわけにはいきません(笑)全面的に信頼し、園に導入するおもちゃを見繕ってもらっています。

園で実際に使っているおもちゃを紹介

最後に、実際にくすの木で使われているおもちゃの一部を紹介します。どれも木ままやで購入可能ですので、ご興味のある方は店舗またはオンラインショップを覗いてみてください。

【乳児】ドラム玉落とし

ドラム玉落とし

0~1歳児のお部屋で人気の、ドイツ製のおもちゃ。
落ちていく玉の様子や、パラパラとにぎやかな音がする様子に、赤ちゃんは夢中です。
転がしながらハイハイで追いかける様子も見られます。

【乳児】ジルケくま・うさぎ

ジルケくま・うさぎ

ドイツ製のぬいぐるみで、2~3歳児に大人気!
ふわふわの抱き心地で、いつも抱っこされていたり、おままごとに参加していたりと、みんなに愛されています。

【乳児】プラステン

プラステン

一見どうやって遊ぶのか考えてしまうドイツ製のおもちゃですが、子どもたちは自由な発想でさまざまな遊びに取り入れています。
棒から輪を取り出したり、輪だけを積み重ねたりと遊び方は無限大!
シンプルで遊びごたえのある、いいおもちゃです。

【幼児】保育つみき

保育つみき

南ドイツ製のシンプルな積み木。
いいおもちゃの王道と言えるおもちゃです。
家づくりに、巨大タワーにと、幼児のお部屋ではいつも大活躍!
たくさん置いてあるから、子どもたちはダイナミックに使えます。

【幼児】チェーンリングカラー

チェーンリングカラー

日本製のチェーンリング。
つなげてアクセサリーを作ったり、おもちゃの鍋に入れて炒めたりと、さまざまな遊びで使われています。
子どもたちの自由な遊び方にいつも感心させられます。

【幼児】ぬりえブックMANDALA

ぬりえブックMANDALA

幼児のお部屋で定番の塗り絵と言えば、まんだら塗り絵。
昔からドイツの書店で売られているのだそう。
生き物や食べ物モチーフの塗り絵と違い、色の塗り方に正解はないので、自由な発想で塗り絵が楽しめます。
ただ塗るだけでなく、たくさん作ってつなげたり、お部屋に貼ったりと、塗り絵の枠を飛び越えた遊び方ができるのも特徴です。

【幼児】ネフスピール

ネフスピール

ドイツで生まれたこの積み木は、50年以上愛されているベストセラーのおもちゃ。
縦横斜めと自由に積めるから、いつも新しい遊び方ができます。
大人たちより、子どもの方が自由に遊べているかも……?

まとめ

くすの木の保育の中心である「遊び」を支えるのは、大園長こだわりの良質なおもちゃです。いいおもちゃにこだわる理由は、子どもの自由な感性で、使い道を限定せず、のびのびと遊んでもらうことが目的だとわかりました。園児たちにはこれからもとことん遊んでもらい、“しぶとく たくましく”成長してほしいと思います。

木ままやの情報はコチラ
https://kimamaya.jp/
広島市安佐南区長楽寺1-16-11
tel.082-872-4262 / fax.082-962-0019
OPEN 11:00-18:00
CLOSE 日・月・祝日

ライタープロフィール

端場さん[PTA 会員No.001]※
2016年生まれの息子と、2018年生まれの娘を持つ、県北育ちの2児の母。子どもは2人ともくすの木出身。くすの木の好きなところは「のびのびとした園風」「園児の主体性を重んじるところ」「親の昼ごはんよりも美味しい、こだわりの給食」。現在ライターとして、さまざまな媒体で記事を執筆。内々に秘めておくだけではもったいない、くすの木の魅力を余すことなく伝えるために、くうねあWebマガジンの運営に参加。「この保育園に通わせたい」「こんな園で働いてみたい」と思っていただける方を1人でも多く増やすのが目標。

※PTAとはParents Team Authors(執筆・保護者チーム)の略で、執筆を引き受けてくれた保護者の方たちのチーム名です。
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